陽進堂のある北陸富山の冬の食材といえば、カニやブリを思い浮かべる方が多いかもしれませんが、地元の方にとってはこれを食べないことには正月を迎えることが出来ない、ともいわれるソウルフードがあります。それがかぶら寿司です。
全国的には石川県の名産として知られていますが、実は富山でも一般的に親しまれているのです。
かぶら寿司とは、塩漬けにしたカブで塩漬けしたブリの身を挟み込んで、米麹で発酵させた熟れ鮨(なれずし)のことをさします。
寿司の名前を冠しているものの、海鮮の切り身を載せた握りずしではなく、米麹で発酵させる点に特徴があります。
熟れ鮨(なれずし)と聞くと少しクセのある味わいを想像しがちですが、実際に食べてみると香りは優しく米麹ならではのほのかな甘味も感じさせてくれます。
地元富山では正月やハレの日などに各課程で、お祝いを記念して作られてきた料理なので家庭料理としても親しまれており、食材もブリを基本とするもの鯖を用いる地域もあるようです。
かぶら寿司は正月を控えた厳寒の季節に本格的に、生産されています。ベースになるかぶらは硬く歯ごたえの悪い部位は使用しないで、まんなかの軟らかく甘味の強い部位だけを使用します。皮も厚めに取り除きます。
この贅沢な処理はフルーティーな香りと、とろけるような食管のためには必須の工程です。分厚く皮をむいたかぶらはスライスされて、5日間塩づけされます。その後塩づけしたブリの切り身をサンドして、無添加の米麹とまぜてさらに5日間漬け込んで完成です。完成したかぶら寿司は、塩麹で漬け込んだかぶらの実は果物と、勘違いするほどの芳醇な香りと自然な甘みを感じることが出来ます。旬のブリも旨みが凝集することで、臭みもなくほどよい口溶け感です。
日本酒のあてとしてはもちろん、白米のおかずとしてもピッタリ、冬の富山を代表する料理なのも納得できます。
※画像は「心づくし味づくし よね田」より転載